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10月19日(土曜日)に、第11回目の「郷土の文化財探訪バスツアー」を開催しました。
今回は「新指定の文化財」をテーマにし、平成30年から令和元年の間に市指定や県指定を受けたものを中心に、文化財の特徴や歴史などそれぞれの細かな解説付きで巡りました。(旅のしおり[PDFファイル/1.58MB])
まずは、市中心部のランドマークとして多くの市民に親しまれている金谷町の妙壽寺を訪れました。
妙壽寺では「妙壽寺本堂・同経蔵・同鐘楼・同中門・同山門」(国登録:H30日3月27日登録)、「妙壽寺本堂設計図面及び附属資料」(市指定:R1年9月25日指定)の6件を、文化財職員の解説をもとにじっくりと観察しました。
妙壽寺本堂や経蔵、門など各建造物の見学では、蟇股(かえるまた)や木鼻(きばな)といった、優美さと独特の意匠の装飾や彫刻などの見所について解説を受けました。参加者の方は、建物を様々な角度から興味深く観察していました。
また、「妙壽寺本堂設計図面及び附属資料」については、9月25日に市指定文化財に指定されたばかりの新しい文化財です。
帝室技芸員の佐々木岩次郎が作図した直筆の設計図面65枚と関連資料2冊が残されており、精緻な墨線と詳細な寸法が書き込まれた図面や、各工事の内訳明細が記された記録類は一見の価値ありです。
これらは資料保護の観点から普段は公開していませんが、今回のバスツアーでは特別に市民の方々へのお披露目となりました。
貴重な資料が見学できる機会ということで参加者の方の関心も高く、大変ご満足いただけたようです。
妙壽寺本堂 妙壽寺経蔵 妙壽寺鐘楼
妙壽寺中門 妙壽寺中門の木鼻 妙壽寺山門
次は香々地地区早田の殿屋敷にある早田国東塔(県指定:H31年3月12日指定)を訪れました。
全体としては重心の低い造形で、蓮華坐が特徴的の早田国東塔は、元々は隣接する畑に散在していましたが、昭和54年の調査で高く評価され、その翌年に復元されました。
参加者の皆さんも、職員の解説を頷きながらメモしたり塔身に陰刻で刻まれている銘や梵字を確認したりと熱心でした。
続いては、厳しい地形の場所として「大魔所」と呼ばれていた夷地区の中山仙境(夷谷)(国名勝:H30年10月15日指定)を鑑賞しました。
中山仙境は2つの谷を分かつようにそびえていますが、後に「聖なる山」として仙境の崖面を利用した信仰の場がつくられました。これにより、東西夷谷の事物が結びついて「二筋の谷の景色を結んだ」と捉えられるようになりました。
この時は仙境に霧がかかっていましたが、この天候ならではの幻想的な景色にもなり、参加者の皆さんも写真を撮っていました。
また、東夷と西夷のそれぞれにある巨岩の兄弟割石も見学しました。
中山仙境についてのパンフレットもあります。こちらからご覧ください!
「国指定名勝 中山仙境(夷谷)」[PDFファイル/5.27MB]
東夷の兄弟割石 西夷の兄弟割石
昼食休憩の後には、田染真木地区にある城山薬師堂四面石仏(県指定:H31年3月12日指定)を訪れました。
岩瘤の四面には阿弥陀如来など10躯の像が彫られていることから阿弥陀信仰が色濃く表れています。この10躯は各像でつくられた年代に差異があることが分かっており、数十年かけて後面まで範囲を広げたと推定されています。
また、その裏手にある、台座が八角柱でつくられているのが特徴の城山国東塔(県指定:S54年5月15日指定)も一緒に観察しました。
城山薬師堂四面石仏を一周しながらより間近で眺めたり、城山国東塔にも近づいて奉納孔(供養の際に経典を納めるための穴)を覗き込んだり職員に質問したりする場面もありました。
最後に小田原の内野観音堂を訪れ、前面に焼痕がのこっていることから「内野の焼仏」として知られている「木造聖観音菩薩立像」(県指定:S44年3月22日指定)と、「内野観音堂木彫仏群」(市指定:R1年9月25日指定)を拝観しました。
「内野観音堂木彫仏群」は5躯の木彫仏からなり、先述の「妙壽寺本堂設計図面及び附属資料」とともに9月25日に市指定を受けました。
この5躯の仏像は経年による朽損が目立ちますが、いずれも内刳を施さない一木造の仏像であり、平安時代に制作された古仏とされています。来歴等などの詳細は不明ですが、西叡山諸堂の仏像または近隣の寺院に祀られていたものが、寺院の廃絶など何らかの理由でこの地に集められたものと考えられています。
文化財室職員の解説を終えた後も、仏像をよく見ようと近づいて1躯ずつ観察したり、写真に収めたりするなど、仏像にも興味を持っていただけました。
参加者からは、「当たり前のように見ていた妙壽寺を詳しく知れて勉強になった」「普段何気なく通り過ぎている所の歴史の変遷が分かってますます興味がわいた」「次回のバスツアーがあればまた参加したい」との感想をいただきました。
郷土の文化財探訪バスツアーは、これからもテーマを変えて定期的に開催する予定です。興味のある方はぜひご参加ください。
これまで実施したバスツアーについて知りたい方のために「旅のバックナンバー」を用意しました。バスツアーの内容や行程について知りたい方はご参照ください。