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10月17日、少し強めの秋風が吹く中、桂川でウナギの隠れ処や餌場を確保する石倉カゴ増殖礁が設置されました。※石倉カゴとは、ポリエステル製の網カゴに石を詰めたもの。
これは、減少傾向にあるニホンウナギを保護するため、「ウナギ生息環境改善支援事業」として、平成28年度から国内各地の河川で実施されている事業で、設置後のモニタリングにより、隠れ処としての設置効果を検証するものです。今年度県内では、大野川(大分市)と桂川の2か所のみで行われます。
この日は、ニホンウナギ研究者の九州大学大学院農学研究院水産増殖学分野の農学博士 望岡典隆特任教授と、全国内水面漁業協同組合連合会の御手洗真二調査役の指導のもと、桂川漁業協同組合(室屋弘栄 組合長)の組合員13名が参加しました。
作業を前に、室屋組合長から「絶滅が危惧されているニホンウナギを後世に、より豊かに残す事業です。近年減少するニホンウンギの保護増殖にむけて少しでも役に立つことができれば、とても有意義なものとなります。重機作業等、くれぐれも事故、けがのないよう注意して作業を行いましょう」とのあいさつがありました。続いて、今回の事業の指導を行う望岡特任教授は「最近の研究で石倉カゴは魚食性の鳥類からウナギを守る効果があることと、石倉を利用しているウナギは利用していないウナギに比べて栄養状態がよく胴回りが太いという2つのことがわかってきました。今回の取り組みによって、桂川で育ったウナギが、2500キロ離れたマリアナの産卵場にたどり着いて産卵してくれることを祈っています。」と話しました。
設置作業では、まず、鉄製の型枠に設置した網に組合員が大小さまざまな石を詰めて石倉カゴを製作。続いて、重機を使い、石倉カゴを川へと運び設置したあと、増水時に石倉カゴが流されてしまわないように、コンクリートの重しも川の中へ設置し約2時間半かけて一連の作業が終了しました。
今回の事業では、モニタリング用の3基を含め合計10基の石倉カゴが設置されました。モニタリング用は、約1か月後に引き上げ、生物の生息状況の確認が行われる予定で、ウナギは個体識別のためのタグを取付け、川に戻されます。また、そのほかの生物は、九州大学総合研究博物館の学術標本として保管され、記録として残されるということです。
ニホンウナギ・・・平成26年、「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」として、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧1B類として掲載