本文
3月7日(火曜日)、市内では珍しい木造仁王像にして、最古の仁王像である「木造仁王像(阿形)」が県指定有形文化財となりました。
真木大堂は9体の重文の仏像群(木造阿弥陀如来坐像・木造四天王立像・木造不動明王及び二童子立像・木造大威徳明王像)で有名ですが、旧本堂にも大型の木造仁王像が安置してあります。
像高227.2cm。樟材の一木造り。背中から内刳りを施し、蓋(後補)をしています。当初は素木(彩色なし)で、天衣をまとっていたと考えられます。
今回の調査では製作年代の比定が改めて行われました。この像は一部に平安時代の仁王像の様式の名残を見せながら、全体としては筋骨隆々で動きの鋭い鎌倉時代の仁王像の姿をしており、平安末期~鎌倉初頭の過渡期に造られたであろうと推定されました。仁王像としては県内最古級のものである事が確かめられました。
また、仁王像は通常仁王門など野外に近い場所に配置され、その環境から状態が悪くなりがちですが、この像は一部の補修を除いて状態が非常に良く、往時の像容をそのまま伝えている貴重な像であると評価されました。
吽形像 阿形像
真木大堂旧本堂には、阿・吽の2躯の仁王像がありますが、両像を見比べてみると、造形が大きく異なることが分かります。
実は阿・吽の内、吽形像は何かしらの原因で1度失われており、江戸時代後期頃に造りなおしたことが分かっています。しかし、阿形像は六郷満山の文化が栄えた頃の秀作で、とても真似できなかったようです。全体的にぎこちなく、筋肉や衣文(衣のしわ)などが形式的になっています。
それに比べて阿形像は、筋骨隆々で、ポーズが動きに満ちていますし、筋肉や衣文の造りはかなりリアルにできています。
木造仁王像(阿形)の特徴を見てみましょう。見学に行く際には要チェックです。
まず、本像に残る平安時代の様式の名残とされるのは、仁王像が腰に巻いている「裳(も)」です。平安時代の仁王像の裳は、腰で折り返しをつくる際に、太く帯状になっていることが多く、木造仁王像(阿形)もこれに合致しています。
鎌倉時代的な動きのある表現については、手や足のさばき方などの的確なポージングに見られる他、「裳」の部分の翻り方にも、鎌倉時代に完成する洗練された表現が見られます。
そして、この像で珍しいつくりをしているのが、大きく振り上げた左腕です。通常、大きく曲がる腕、細かい指先の部分は、幾つかの材をつなぎあわせて造りますが、この像は左肩から指先にかけて一材で造られています。卓越した技術があったことだけでなく、かなり大きな材木から彫り出されたことが推測されます。
裳の折り返し部分 左腕は一材で彫られる
今回「若宮八幡神社」も指定されましたので、豊後高田市に所在する県指定文化財は55件となりました。なお、阿形像のみ昇格し、吽形像の市指定は解除されません(平成29年3月7日現在)。