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6月25日 国史跡の「富貴寺境内」を構成する重要な文化財のひとつ、富貴寺の本堂は、長年の劣化により、現在、大がかりな修理(全解体)工事が進行中です。江戸時代中期に建立されたとされる富貴寺本堂。現存する六郷満山寺院の本堂建築の中では、最も古い建物で、今回の修理工事は、建立以降初めてとなる約300年ぶりの大規模保存修理工事となります。
この日、今週末(6月29日)の一般公開を前に、地元の田染小・中学生が現場を訪れ、解体が進む修理現場や部材をストックする保存小屋など、説明を受けながら見学しました。
説明を行ったのは、全国の文化財修理にかかる設計や監理を担う公益財団法人文化財建造物保存技術協会の江﨑さん。解体前の写真を見せながら詳しく説明しました。
江﨑さんに、専門家の観点から工事を進めて新たに分かったことなどを伺うと「解体を進める中で、梁(はり)に穴があることが分かりました。これは、実際に本堂が茅葺(かやぶき)の屋根の造りだった痕跡で、これまで古文書などの資料の裏付けとなるものと分かりました」と話してくれました。また、そのほかにも「使われているクギからも、建物の建築年数を推測することもできます。現在、一般的に使っているクギは、"西洋クギ"で150年くらい前に作られました。それ以前は、打てば入り込むクサビ形の"日本クギ(和釘)"が主流で、本堂にも使用されています」と、300年前の建築技術などについても説明していました。
真剣なまなざしで説明を聞いた大江玲那さん(田染中3)は「普段見られない本堂の内部が詳しく知ることができて、とても勉強になりました。」と感想を話してくれました。
この現場公開にあわせて、子供たちは、市教育委員会の出前講座を開催し、前もって富貴寺の歴史などについての事前学習を行ってきました。
今年2月下旬からとりかかった解体作業は、順調に経過しており、現在では、全部材の4分の1程度が運び出され、保管されています。本年度中に解体を行い、来年度以降2か年度で復元にむけての設計や修理を行います。